コラム DX時代 〜第11回 CRM領域のDX(2) ~ 形骸化させない!CRM活用のポイント ~
- hiro876
- 2020年10月19日
- 読了時間: 6分
このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。
前回は改めてCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは?をテーマにMA(マーケティング自動化)、SFA(営業支援システム)、カスタマーサポートシステムの3つのサービス別の特徴を解説しました。
今回も引き続きCRMの効果や、導入~運用定着に向けたポイントをお伝えしたいと思います。
■はじめに ~今回のポイント~
今回は次の3点についてお伝えします。
DXの第一歩はデータを収集、蓄積すること
CRMの真の効果は?
CRMツールを導入して、形骸化させず運用を定着させるために
■DXの第一歩はデータを収集、蓄積すること
さて、少しCRMの話からそれますが、これまで様々な企業のIT活用を支援してきて、未だ企業の顧客情報をMicrosoft Excelで管理している企業が少なくありません。
Excelを顧客管理ツールに利用されている理由として、以下のようなことがあるようです。
即座に、思い通り柔軟にデータリストを作成できる
社内外の誰もが扱うことができ、ファイルが共有しやすい
日頃慣れ親しんだOfficeツールで追加コストの必要がない
前任者から受け継いだ業務ノウハウが詰まっており、切り替えが難しい
システムの追加投資も不要で、現場の業務がうまく回せている状態であれば、業務上とくに問題のない状況とも言えます。皆様の企業ではいかがでしょうか?
私は、企業の情報管理(顧客管理や販売管理、在庫管理など)がExcel中心となっている支援先企業に対して、以下の点をアドバイスするようにしています。
「Excelは表計算ソフトである」
Excelは数値データの集計・分析に用いられる表計算ソフトです。
本来であれば、顧客情報などデータを管理する専門のツールではありません。ただ表計算ソフトは年々進化しており、簡易データベース機能も備わるようになってきたことから、個人使用のレベルであれば表計算ソフトでも十分にデータ管理できるようになりました。また、ツールとしての柔軟性が高く、職場の情報管理でExcelが活躍している企業のほうが多いことでしょう。
一方で、データ管理の専用ツールではなく、また柔軟にデータ管理できるがゆえに、業務上様々な弊害がでてくることがあります。
<Excelデータ管理の弊害の例>
個人の好みで自由にデータを管理できることから情報の属人化を生みやすい
いろいろな箇所と共同編集しているうちに、情報の分散がおこりやすい
ツールとしての柔軟さが、かえって情報管理のあいまいさや不整合につながって、無駄な作業やミスを生み出してしまう
そして、企業にとっての一番の弊害となるのは、企業内のデータ収集、蓄積や、企業内のデータ活用が進まないことです。
DX推進を目指す企業のテーマに「Excel依存からの脱却」があがってくる理由として、業務効率化のみならず、DXの目的の一つであるデータ活用のためのデータ収集、蓄積が大きく関わってきます。
■CRMの真の効果は?
それでは、顧客情報管理がExcel依存となっている企業が、CRMに移行することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
<顧客管理をCRMに移行するメリット>
来店/電話/FAX/HP/SNS/メール/郵送といった様々な顧客の行動履歴、問い合わせ履歴、購買履歴、アフターフォローの履歴などを一元管理
登録された顧客情報、履歴情報は、企業内はもちろん、社外(顧客、パートナーなど)にリアルタイムに共有が可能
AIと連動したCRMサービスも登場しており、顧客へのアプローチなどをCRMが自動的に提案してくれる
見込み客管理〜販売管理〜会計〜データ分析までを一気通貫で連携され、経営層が気になる売上状況などのKPI指標も即時に把握できる
経営者、セールス、マーケティングの現場に圧倒的な安心感を得られる
メリットにあげたこれらをExcelだけで実現することが困難であることはイメージがつきやすいことと思います。
CRMのメリットをわかってはいても、なかなかそこにたどり着けないことで困ってるんだ、という声もあるでしょう。そこでCRM導入、移行のハードルについても考えてみましょう。
■CRMツールを形骸化させず運用を定着させるために
CRMツールが便利なのはわかるけど、かなりのコストがかかるのではないか?
下の表は主要なクラウド型CRMサービスを比較した表ですが、クラウドサービスの普及で、わずか月額数千円のコストでCRMを導入することができるようになりました。導入のハードルはほぼなくなってきたといえます。
参考:クラウドCRM製品比較 (引用:BOXIL CRM特集記事より)
なお、各製品が提供するプランは以下の通りです。上表内の利用料は、最安値のプランです。
Salesforce:Professional/Enterprise/Unlimited
Zoho CRM:スタンダード/プロフェッショナル/エンタープライズ
Dynamics 365:Business/Enterprise
HubSpot:Starter/Professional/Enterprise
一方でCRM導入企業の中には、CRM運用が定着しづらいといった課題があることも事実です。
4年前(2016年)の調査結果ですが、CRM(SFA)導入企業のCRMツール定着率は50%というデータがあります。(※ジャストシステム 「SFA/CRMを売上向上に直結させる方法」より引用)
CRMは企業の様々な業務課題に応える豊富な機能が備わっていることから、かえってそれが高いハードルとなって、現場が使いこなせない、利用効果が見いだせない、といった状況になり、結果、CRMツールの利用をやめて元の運用に戻したというケースも少なくありません。
CRMの運用を定着させるポイントは以下の通りです。
<CRMを定着させるポイント>
・ 経営層、幹部自らがCRM導入、運用定着を推進
経営層、幹部自らが顧客管理上の課題点とCRM導入効果を理解し、導入目的を明確にとらえること。そして自らが推進役になり、従業員に対してCRM導入目的を伝えていくことが重要です。
・ 導入前の業務シミュレーション
導入前の業務シミュレーションをしっかり行うことも大事なポイントです。
現場のフラストレーションは、今までうまくいっていた業務がCRM導入によって回らなくなることです。CRM導入後、運用は変わっても業務がうまく回せることを導入前の業務シミュレーションで確認することが必要です。また、過度な業務改善を期待させるのではなく、業務負荷は変わらない(もしくは増える可能性がある)かもしれないが、その努力が企業の貢献につながることを推進役から伝えていきます。
・ 教育と情報共有
CRM自体が豊富な機能を備えていますので、使いこなしてもらうための研修などの教育が大変重要です。もちろん導入時のみ教えればよいわけではなく、運用後も問い合わせ窓口、ノウハウを共有しあうコミュニティを設ける、などの検討も必要となります。
企業でDXが叫ばれる時代のなかで、企業活動におけるデータをリアルタイムで収集、経営状況を把握することはもはや企業の最優先事項と言えます。データ活用や顧客管理に対して課題を持たれている企業の方は、CRM導入を検討してみてはいかがでしょうか?
■今回のまとめ
業務自動化の第一歩は、データを蓄積するところから
CRM導入により経営者、セールス、マーケティングの現場に圧倒的な安心感を得られる
CRM導入には現場でなく経営者が率先し利用啓蒙する
次回もDX推進のポイントを解説したいと思います。
以上
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