コラム DX時代 〜第12回 電話のDX ~Amazon Connect
- hiro876
- 2021年2月22日
- 読了時間: 8分
このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。
企業のIT活用を支援させていただくなかで、電話システム(コールセンターシステム)に関する相談が増えてきました。インサイドセールス業務やサポート業務のコールセンターを運営される企業はもちろん、一般企業の方々からも「従業員が在宅勤務中も会社の電話を受けられるようにしたい」、「オフィスの営業時間外の電話応対のロボット化やデジタルチャネルへの誘導に対応したい」といった相談をいただくことが増えてきました。新型コロナの影響からテレワーク対応が進んでいることが一因と言えます。
従来の電話システムはPBX(構内交換機)やCTI(コンピューター電話統合システム)といった数百万円以上もする複雑で大規模な機材を導入する必要があり、複雑かつ専門性が高く導入のハードルが高い代物でした。
しかし近年、電話システムもクラウドサービス化が進み、少ない投資で高度な電話システムを導入できるようになりました。
今回は、2017年にECサービスのAmazonがサービスを開始したクラウドコールセンターサービス「Amazon Connect」を取り上げたいと思います。DXの中核の一つとして注目される革新的なサービスですので、ぜひ覚えていただけたらと思います。
Amazon Connect HPより
Amazon Connectは、Amazonが提供する100%クラウド型のコールセンターサービスです。複雑で高度な電話システムを、ユーザーが使いやすいかたちに低コストで提供している点が特徴です。今から10年以上前、Amazonが自らのECサービス向けのコンタクトセンターを立ち上げるにあたって、Amazonのニーズを満たす電話システムが世になかったことから、自ら構築したサービスがベースとなっています。「地球上で、もっともお客様を大切にする企業であること」をビジョンとするAmazonが、最大8万人規模のカスタマーサービスのスタッフ、32か国のオフィスそして在宅拠点より、世界中の人々に高品質なカスタマーサービスを提供するために構築したサービスを、我々も利用することができます。
サービスは従量課金制で、初期費用や基本料金といった考え方がありませんので、コンタクトセンターの規模を柔軟に拡張縮小でき、運用の簡素化、コスト削減につなげることができます。Amazonは従来の電話システムと比較して約80%のコスト削減ができると謳っています。
また、従来の電話システムは電話システムの専門業者に依頼して導入、運用する必要がありコストや期間がかかるものでした。Amazon Connectの場合、初期の学習は必要ですが、簡単なフローの電話システムであれば僅か数分で構築ができてしまうというのがウリです。
それでは、本当に電話システムの構築が数分でできてしまうのか?を、試してみることにしましょう。
■実際に構築してみよう ~構築する問い合わせフロー~
今回は、実際に自社の電話システム用に、以下の図のような問い合わせフローをAmazonConnectで実際に作ってみることにしました。
図:今回Amazon Connectで構築したコールフロー
お客様がかける電話番号ですが、Amazon Connectで取得することができます。
そして、この電話番号に電話がかかってきたときの振る舞いをAmazon Connectの問い合わせフローで作成できます。(図の真ん中の枠が問い合わせフローのイメージです)
①まず「通常時」はオフィスで勤務中の時間帯のイメージです。これまでの電話システムは机上の電話機などで電話を取っていましたが、Amazon Connectは、基本的にパソコン上のブラウザで動作するソフトフォンを使って電話の受発信を行います。
②また「リモート・在宅時」、アフターコロナ以降もリモート勤務、在宅勤務が当たり前となりますので、外部ではスマートフォンに電話を転送して受け取ることを想定しています。
③そして「不在・営業時間外」です。この時間は音声メッセージを流し、後日折り返し電話をするようなフローを想定してみます。
■サービスのセットアップ
Amazon Connectのスタート画面
Amazon Connectを利用するためには、はじめにAWSアカウント登録が必要です。このコラムではAWSアカウントの解説や詳しいセットアップ手順は紹介しませんが、セットアップ自体は非常に簡単です 。AmazonConnectの詳細な設定ガイドが公開されていますので参考にしてください。
確かにわずか数分の設定でAmazon Connectのインスタンス作成が完了!
こちらがAmazon Connectのダッシュボード画面、ウィザードにしたがって設定を進めていきます
■電話番号の取得
さて、インスタンスが作成されたら、電話番号の取得を行います。Amazon Connectでは、直通ダイヤル番号(市内局番)050、03の電話番号、または通話料無料番号0120、0800の電話番号をネット上から取得することができます。(※1)今回は050番号を取得することにします。
※1:電話番号の申請のための条件がありますのでAmazon Connectの「Amazon Connectの電話番号について」のページで確認してください。
■オペレーション時間を設定
オペレーション時間(営業時間)を設定していきます。これで営業時間、営業時間外で問い合わせフローを分けることができるようになります。
■実践 ①通常の問い合わせフローを作ってみる
それでは問い合わせフローを作ってみます。まずは「①通常の問い合わせフロー」です。営業時間内は、通常通りオフィスのPCのソフトフォンで電話を受けられるようにします。
「問い合わせフローを作成」をクリックし、フローを作成していきましょう。
エントリポイントが、電話を受けたときの問い合わせフローの開始です。はじめに「音声の設定」をフローに追加します。クリックすると設定画面が表示されますので、「言語」を「日本語」に、「音声」は女性の声(Mizukiさん)または、男性の声(Takumiさん)を選択します。
音声の設定では言語、音声(男性・女性)が設定できる
作成ができたら、ブロック同士を線で結びます。このようなかたちで問い合わせフローを作成してきます。
続いて営業時間内かを確認するフローを追加してきます。「オペレーション時間を確認する」をフローに追加しています。
クリックすると設定画面が表示されるので、営業時間内、営業時間外、それぞれの音声案内を登録してみます。
ちなみに今回は次の音声案内を登録しました。
営業時間内・・・「お電話ありがとうございます。担当者におつなぎしますのでそのままお待ちください。」
営業時間外・・・「お電話ありがとうございます。ただ今の時間は営業時間外となりますので、後日折り返しご連絡させていただきます。」
出来上がったフローは次の通りです。
サクサクと問い合わせフローができあがっていきます。
従来のシステムではエンジニアにコールフローを作成してもらう必要があり、時間もコストもかかるものでしたが、ここまで柔軟にフローを作成できるとはちょっと感動してしまいました。
■実践 ②リモート・在宅時を想定しスマートフォンに電話を転送
さて、続いてリモート・在宅時を想定しスマートフォンに電話を転送してみます。これは人員の確認というブランチで、従業員が「オンライン」(ソフトフォンが取れる状態)であれば在席、それ以外は不在としてスマートフォンに転送させます。
もしスマートフォンに出ることができない場合も音声案内を流すようにします。
今回は、「担当者に接続できませんでした。恐れ入りますが後ほどお掛け直しください。」とメッセージを残すようにしました。
■実践 ③不在時を想定したメッセージ再生、折り返し
メッセージを再生後に、折り返し電話ができるようにコールバックキューと呼ばれるものを設定します。これにより営業時間外に着信があって蓄積されている折り返し先(アウトバウンドキュー)を順次処理できるようになります。
これで営業時間外にかかってきた電話のビジネスチャンスを失わないようにできますね。
最後に、問い合わせフローの最後を示す「切断/ハングアップ」をブロックとつながればフロー作成の完了です。
作成したフロー全体は以下のようになりました。
フローの保存と公開を行うことで電話がかかってきた時の問い合わせフローにしたがって電話が受け取れるようになります。
■実際に試してみよう
それでは営業時間のケースです。きちんとソフトフォンで受電できるでしょうか。
営業時間内にソフトフォンをAvailable(利用可能)の状態にして電話が来るのを待機します。
■おわりに
結論から申し上げると、さすがに問い合わせフローの構築まで含めると数分での設定は無理でした(笑)でも今回扱ったような問い合わせフローであればものの30分程度で大規模な運用でも使えてしまうレベルの電話システムが準備できてしまいました。
電話システムのノウハウが必要でなかなか素人が手をだせる代物ではなかった電話システムをこんなにも簡単に構築することができ、少し感動してしまいました。
そしてこのサービスより、企業はチャットも含めたマルチチャネル化と、テレワーク化を低コストで実現することが可能となります。また今回は初級編として取り扱わなかったのですが、通話録音、音声認識、AI解析といった機能も接続できますので、まさにDX、これまでの会社の電話チャネルの常識を大きく覆す新しいサービスといえるでしょう。
今後もDXの中心となりそうなサービスを折に触れて紹介していきたいと思います。
本日のまとめ
・ Amazon ConnectはDXど真ん中のサービス
・ わずか30分で、これまで何か月もかかっていた問い合わせフロー構築ができてしまった
以上
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