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コラム DX時代 〜第13回 DX推進企業における内製化の取組み

  • hiro876
  • 2021年2月26日
  • 読了時間: 6分

このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。

新型コロナウイルス感染拡大という未曽有のパンデミックに見舞われた2020年が終わり、新たに2021年を迎えました。緊急事態宣言が発出された昨年4月以降、飲食業や観光業など多くの企業が深刻な経営状況に陥り、企業のデジタル化推進の動きも鈍るのではないかと考えていました。しかし実際はその逆で、昨年2020年に私が中小事業者のデジタル化を支援した件数は一昨年2019年と比較して1.5倍ほど増加しています。コロナ禍のこの時期を変革の機会ととらえた企業経営者が数多くいらっしゃったことを表しています。

さて昨年2020年8月にIPA(情報処理推進機構)がIT人材白書2020を公開しました。IT人材白書は、国内のIT人材の動向や実態を網羅的に調査しとりまとめた書籍です。2020年度版では、「DX取り組み企業やDXに対応する人材」について調査・分析されており、企業内のデジタル推進の現状を捉えるのに大変参考になりましたので、今回のコラムで一部紹介したいと思います。


IT人材白書サイトより引用


■DX推進企業における内製化状況 ~IT人材白書2020より~

白書では、DXに取り組んでいる企業と、そうでない企業に分けて取り組み事例が紹介されていますが、今回は「DX推進企業における内製化状況」を注目して取り上げたいと思います。


「IT人材白書2020」概要 P.13 ~IT業務の内製化とDXの取り組み~ より


IT業務の内製化状況を尋ねた結果をDX取り組み別に比較したものである。DXに取り組んでいる企業は、「企画・設計などの上流の内製化」を進めている割合が41.9%と高い。DXに取り組んでいない企業は内製化を「進めていない」割合が51.9%である。

この結果は何を表しているのでしょうか。DX推進は、ビジネスとデジタル(IT)の連携が不可欠です。昨今の変化のスピードが速い事業環境において、迅速にデジタルソリューション導入を推進するためには、内製化を抜きに取り組むことが難しいことを表しています。

しかし企業内の人材は限られるでしょうし、人材の獲得・育成に時間がかかるなかで、即座に内製化を実行に移せる企業は少ないのではないでしょうか。

そのような場合、DXの企画や設計(上のグラフの紫の部分)においては、外部の専門家(ビジネスアナリスト、ITコンサルタント)を活用してアドバイスをもらいながらDX推進するなかで自社内のデジタル人財育成を図っていく方法が考えられます。

では、プログラム工程を含めた全体工程(上のグラフの赤の部分)の内製化をどのように取り組んでいけばよいかを考えてみたいと思います。


■ DX推進の内製化/外部委託の切り分け

昨年、私がアドバイザーとして支援した士業法人の事例を紹介したいと思います。企業規模は小さいですが、会社の代表を中心にWEBマーケティング、社内IT化を積極的に進めてきた企業です。ホームページやメールを活用した集客に力を入れたいと考えており、マーケティングオートメーション(MA)※のソフトウェア導入を検討していました。

※マーケティングオートメーション(MA):ホームページやメール、SNSといったデジタルマーケティング業務を自動化することで業務効率化、生産性向上を図るソフトウェア、サービスのこと

これまで自社ホームページのコンテンツ企画、編集、アクセス分析といった運用は自社内のスタッフで対応してきましたが、ホームページサーバ構築や社内ITの保守運用全般はすべて外部ベンダーに委託していました。もちろん導入検討中のMAの知見のある人材も社内にいないため、これまで付き合いのあった外部ベンダーにMAソフトウェアの導入、運用の提案を依頼しました。しかしソフトウェア導入支援にかかるコスト、運用コストが割高で導入の判断には至りませんでした。

この時代、デジタルを積極的に活用しなければ市場競争に負けてしまいます。代表とも会話し内製化を検討することにしました。

従来のような社内ITを外部ベンダーに丸投げする状態では、コストの問題のみならず、マーケティング施策のスピード感、柔軟性が薄れてしまうことを代表も理解されていました。

限られた社内リソースで内製化を進めるため、外部ベンダーに任せる範囲、自社で内製化を進める範囲を切り分けることで実現しやすく効果の高い内製化体制を作ることを目指しました。先ずはこれを切り分けるために「IT技術の難易度」と「ビジネスの変化による改修頻度」の2つの軸から方針を検討してみることにしました。


「外部委託」する領域:上図の右下

導入予定のMAソフトウェアでメールマーケティングの自動化を実現するためには、顧客の氏名やメールアドレス情報を導入済みの顧客管理システムから取得し、MAソフトウェアと連携させる必要がありました。「IT技術の難易度」が高い作業で、自社内でこれを実現することは難しく、またシステム連携を対応した後はめったに変更が発生しないため「改修頻度」は低いと考えました。そこでこの対応は外部ベンダーに「外部委託」とすることにしました。

「内製化」を目指す領域:上図の左上

MAはマーケティングの自動化ツールですが、見込み客に対してどのような条件で情報の発信、紹介を行っていくかのジャーニー(シナリオ)の作成、顧客の動向把握のためのレポートを作成、といった設定作業が伴います。これらは運用を重ねるなかで頻繁に調整を加えていく地道な作業が必要です。「IT難易度」は低く、「改修の頻度」が高くなるこのような対応は、初めのうちは習得に時間がかかりますが、極力自社で内製化することでDX推進につながる重要な領域となりえます。

「内製化」を目指す領域:上図の左下

MAの導入準備には、ホームページ上にチャットボットの設置、マーケティング分析用タグの設置、といった対応もあります。「IT難易度」は低く、また一度設置するのみの作業で「改修の頻度」も低いことから、外部委託したほうが早い、という考え方もあります。しかしソフトウェアの理解を深めていくためには、このような対応も内製化していくことを推奨します。

内製化の体制がとれない場合は、外部のシステムエンジニアリングサービスを活用し、スポットでエンジニアに作業支援してもらいながら、自社人材の知見を蓄積しつつ、将来的には内製化できるようにつなげていく方法も検討できるでしょう。

「内製化+外部委託」する領域:上図の右上

導入予定のMAソフトウェアのチャットボットは、オンラインスクリプト言語によるプログラミングでボットの動作を実装する必要があります。またAIエンジンを活用して顧客別にボット機能をカスタマイズすることもできます。いずれも自社内で取り組むには非常に「ITの難易度」が高いものです。一方でボットの機能は運用する中で「改修の頻度」が高くなることが見込まれます。技術面は外部ベンダーに頼っていく必要がありますが、AIやロボットによる自動化といったDXの要につながる領域こそ内製化を進めていくべきだと考えます。すべてを外部委託することなく、外部ベンダーの支援をもらいながら社内人材の知見を高めていく内製化を進めていくことがよいでしょう。


■おわりに

今回はDX推進にあたっての内製化をテーマに取り上げました。社内のリソース、IT化予算などの制約があるなかでも、うまく内製化、外部委託を切り分けしてDXを推進いただくヒントになればと思います。

次回は、ビジネスとITの橋渡し役であるビジネスアナリストについて取り上げたいと思います。

以上



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