みなさま、こんにちは。
このコラムではDX(デジタルトランスフォーメーション)にはじめて関わる方、これからDXに取り組まれる方を対象に、DXとは何か?また企業がDXに取り組む際のポイントについてお伝えします。
■DXが注目されている背景
前回(第1回目)ではDXとは何か?を解説しました。そして今回は、なぜDXが注目されているのか?その背景について解説したいと思います。
前回のコラムの中で『ビジネス環境、経営戦略を考えるときにデジタル技術が無視できなくなっていることが、DXが注目されている背景にある』と書きました。
DXが注目されている背景を以下の2つの軸から詳しく見ていきたいと思います。
1.2025年の崖 2.産業の創造的破壊とゲームチェンジ
今回のコラムでは、先ず1点目の「2025年の崖」について解説します。
■2025年の崖
近年、DXが注目されるきっかけの一つとして、経済産業省が2018年9月7日に公表した「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」があります。 DXレポートでは、企業におけるDX(デジタル変革)の必要性と推進にあたっての方針、対応策などが詳しく著されています。 また、このレポートのなかでは、国の公的機関(経済産業省)としては異例なことに、企業に対して長年利用を続けている基幹システム※1を速やかに刷新するよう要請しています。本来であれば企業のもつシステムですので利用期間や更新時期は企業自身が独自に判断すべきことです。しかし、旧態依然の基幹システムを利用し続けることが結果的に社会全体の損失につながりかねないことから、経産省としても看過できない状況にあるとレポート内で警鐘を鳴らしています。
図:DXレポートで指摘されている「2025年の崖」の問題提起 (出所:『DXレポート』を基に作成)
DXレポートでは、ブラックボックス化※2された既存の基幹システムが残り続けることによる弊害として主に上図の4点が指摘されています。
①2025年には、基幹系システムを21年以上稼働している企業の割合が全体の60%を占めるようになる。
②企業のIT予算の90%以上が、ランザビジネス(保守運用)予算に費やされ、バリューアップ(研究開発、業務効率化など)の予算が捻出できなくなる。
③既存システムの保守運用のためのコストがかかり、IT人材もそちらに費やされる。結果、2025年の試算としてIT人材が約43万人も不足する。
④既存システムの老朽化やブラックボックス化に起因するトラブル、システムリスクが高まり、試算として2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する。
つまりデジタル変革のためのIT予算、人材が不足する日本企業は、国際競争力を失うばかりか、システムリスクによる経済損失が肥大化する一方となってしまうのです。 これら2025年に向けた最悪のシナリオをDXレポートでは「2025年の崖」と呼んでいます。
私もITアドバイザーとして様々な企業のシステムに携わっていますが、この「2025年の崖」に無関係の企業はほとんどないといってよいほど重要なテーマのひとつです。
・長年に渡って利用されているシステム
・業務の根幹を担う大規模な基幹システム
・利用する箇所(部門)、利用ユーザーが多いシステム
このような既存システムを抱えている企業のシステム担当の方は、こちらのコラムや経産省のレポートなどを参考にしながら、2025年の崖を乗り越えていただきたいと思います。 次回も引き続き「2025年の崖」について、経済産業省が推奨している対応方針を取り上げます。
※1 基幹システム・・・企業の経営、事業推進の根幹となる業務システムのこと ※2 ブラックボックス化・・・基幹システムにおいて、様々な技術者が長い時間をかけて開発・改変を繰り返すことで、システムのデータ構造や内部構造を当事者以外が解明できない状態になること。
Comments