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コラム DX時代 〜第3回 2025年の崖 ~企業はどう対応するべきか?~

このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にはじめて関わる方、これからDXに取り組まれる方を対象に、DXとは何か?また企業がDXに取り組む際のポイントについてお伝えします。

■「2025年の崖」企業の現状

前回(第2回目)では、なぜいまDXが注目されているのか?経済産業省の「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」のなかで2025年の崖として問題提起されている4つの問題を取り上げました。


2025年の崖として問題提起されている4つの問題

①2025年には、基幹系システムを21年以上稼働している企業の割合が全体の60%を占めるようになる。②企業のIT予算の90%以上が、ランザビジネス(保守運用)予算に費やされ、バリューアップ(研究開発、業務効率化など)の予算が捻出できなくなる。③既存システムの保守運用のためのコストがかかり、IT人材もそちらに費やされる。結果、2025年の試算としてIT人材が約43万人も不足する。④既存システムの老朽化やブラックボックス化に起因するトラブル、システムリスクが高まり、試算として2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する。

今回のコラムでは、この2025年の崖をどのように乗り越えていくか、つまり根本の要因である長年運用し続けている旧態依然の基幹システムの刷新をどのように対応していくかについて書きたいと思います。

上述の通り、基幹系システムを21年以上稼働している企業の割合は全体の60%を占めています。企業でシステム刷新が進まない理由はどこにあるのでしょうか?企業によりその原因は様々ですが、いろいろな企業をITアドバイザーとして訪問していると、企業の経営者や情報システム担当者、運用担当者から共通して以下のような話をよく耳にします。


【経営者】

近年のIT動向にはアンテナをはっている。同業他社でもAIやIoT、RPAといった先端デジタル技術を導入しサービス差別化、生産性向上を果たした事例をよく聞き、自社にとっても経営課題であることは認識している。しかしデジタル技術活用について推進できる要員、ノウハウが社内にないため、情報システム担当部門にシステム刷新を指示しても迅速に推進できていない。

【情報システム担当者】

社内システムの保守運用が業務時間の大半を占めている。毎年の実行計画にあがっているシステム刷新の検討ができる要員、時間を十分に確保できず、結果としてここ数年目立った進捗をあげられていない。あわせて自社システム部門には社内システムを網羅的に把握しているメンバーが異動してしまったため、既存システムの開発・保守に長年携わって社内業務に精通している外部ベンダーに頼らざるを得ない状況である。

【運用担当者】

運用担当者から基幹システムに対する機能改善の要望が多数あがっている。システム部門にも度々要請しているが、検討に期間がかかっており、結果的に外部ベンダーが対応できるリソースがない、対応コストが高いなどの理由から手つかずとなっている。社内の運用要員の削減、残業削減が進む中、運用現場の工夫でなんとかしのいでいる状況である。

皆様の企業でも上記のような状況に心当たりがあるのではないでしょうか。

企業内のそれぞれの立場の人がシステム刷新の必要性は感じているものの、なかなか取り組みが進まず、どの企業でも対応に苦慮しています。

長年かけて運用された基幹システムは、よく言えば期間とコストをかけて業務にあわせて最適化、洗練化されたシステムです。しかしその反面、いざシステム刷新となると業務への影響度が非常に高く、コスト、人員もそれなりの期間で手厚かく構える必要があります。また上の例のように、システム全体を理解している人が自社内にいなくなり、開発保守を委託しているベンダーに頼りきりのケースも少なくありません。これらがシステム刷新の判断を難しくしているのです。

■「2025年の崖」システム刷新の進め方

経済産業省の「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート」では、上記のような企業を対象に、システム刷新に必要なプロセスや体制づくりの指針「DX推進システムガイドライン」を公表しています。

このガイドラインでは、システム刷新に対応するために関係者に必要となるスキルセットや心構え、注意点が記載されています。主なものを抜粋すると以下のような内容です。

●経営トップ自らシステム構想の検討、開発の推進

  DXは情報システム部門だけで構想の検討や、開発を推進できるものではありません。経営レベル、事業部門、DX 推進部門、情報システム部門から成る少人数のチームの組成、トップダウンでデジタル変革を推進していくことが必要です。

●事業部門のオーナーシップ

各事業部門がオーナーシップを持って、システム刷新で実現したい事業企画・業務企画を自ら明確にする必要があります。さらに新システムでどのようなことを実現したいかをまとめる要件定義、製品評価、リリースに至るまでの責任を担っていくことが重要です。

●ユーザー企業自らの選択・判断能力

  システム刷新には様々な選択・判断能力が求められます。

過去に軽微対応と判断された施策や、短期的観点で安易に導入したシステムが、結果として、長期的に運用費や保守費の高騰の要因となっているケースも多くあります。決してベンダーに丸投げせず、ユーザー企業自らが情報の収集や影響調査などを行って選択・判断を行う必要があります。

●評価・ガバナンスの仕組み

全社的なシステム構築、システム刷新にあたっては、各事業部門のシステムの個別最適を回避し、全社最適となるように複雑化・ブラックボックス化しないよう、全社的なガバナンスを確立する必要があります。

 まとめると、システム刷新を進めるためには、経営者自らが先頭に立って企業全体で組織・体制、制度・プロセスの刷新から取り組む必要があるのです。

DXレポートでは、その他にも先行事例や失敗事例を交えて詳細が紹介されていますので、ぜひ一度読んでみてください。

 次回は、DXが注目されている背景として、「2025年の崖」にならぶ2つ目の軸「産業の創造的破壊とゲームチェンジ」について解説いたします。

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