みなさま、こんにちは。
このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にはじめて関わる方、これからDXに取り組まれる方を対象に、DXとは何か?また企業がDXに取り組む際のポイントについてお伝えします。
■前回までのおさらい
前回(第4回目)まで、なぜいまDXが注目されているのか?2つ挙げた理由のうち2点目「産業の創造的破壊とゲームチェンジ」を取り上げました。
創造的破壊、ゲームチェンジが素早く頻繁に繰り返される経営環境のなかで、企業では新たなビジネスモデルの構築や、ビジネスプロセス変革、競争力の維持・向上が求められており、これらを実現する手段としてDX(デジタル革新)が注目されていることを解説しました。
今回は、企業が創造的破壊、ゲームチェンジに対応していくためにどのような取り組みを行っているのか?企業の様々な取り組みのうち「戦略・目標」、「組織・体制」に関わる取り組みについて、DX推進企業の事例を交えてお伝えします。
図:企業におけるDX推進
■戦略・目標 ~DXの目標を明確にする~
「ライバル企業がAIを使ったチャット型カスタマーサービスを構築して業務効率化につなげているそうだよ、うちも出遅れないようAIを使ったサービスを考えていこう」
「先日うちの社長が新聞を読んでいて、ある飲料会社がSNS上のビッグデータを活用したソーシャル調査をマーケティングに活用している特集記事を見つけたそうで、うちの部でもそのようなサービスを早速検討してほしいそうだ」
企業のマーケティング部門やシステム部門でよく耳にしそうな会話です。
先端技術に興味をもって成功事例に倣って自社サービスへの活用を検討する。すばらしい取り組みだと思います。しかしその一方で、上記のようなきっかけでスタートした取り組みの成功が少ないことも事実です。DBTセンター※1によると企業が取りくんでいるDXの約95%が失敗に終わっているそうです。その大きな理由の一つとして「デジタル化のためのデジタル化」があげられています。
前半で述べたようなAIをつかったサービスを考えよう、ビッグデータを使ったサービスを検討しよう、といったようにデジタル化そのものが目標となっていることが「デジタル化のためのデジタル化」です。
第2回目のコラムでも述べましたが、DXは経営者自らが先頭に立って企業全体で戦略、組織・体制、制度・プロセスの刷新から取り組む必要があります。「デジタル化のためのデジタル化」とならないようDXの背景や目標を明確にすることが重要です。
ある大手商社ではDXの取組みとして、クラウドサービス(Teams)導入による全社的な業務効率化を実現しました。この取組みにあたっては、はじめに「従業員の攻めの時間の創出」という全社的な目標を掲げ、定量的な数値目標も定めました。つまり、クラウドサービス導入による業務効率化は目標ではなく、あくまで「従業員の攻めの時間の創出」のための手段ということです。
■組織・体制 ~DX推進プロジェクト構築/経営層の積極的な関わり~
社内の優秀な人間を集めてデジタル変革チームを作る、ただそれだけでDXは推進されません。DBTセンターの調査結果では、組織内で収益力をもつ事業部門がプロジェクトに入って自らDXを推進していくことが重要であると述べています。プロジェクト内に事業の視点を与え、かつ事業部門がデジタルの視点を持つきっかけとなり、何よりDXの恩恵を受ける事業部門自らが計画し推進していくことは全社的にも大きな価値があります。
かつてのシステム化投資においては、システム開発するシステム部門、システム活用する事業部門で役割が分かれていましたが、DXにおいてこのような体制で推進することはまずありません。
経済産業省では積極的なIT利活用による経営革新、生産性向上に成功した企業を選定して「攻めのIT経営銘柄2019」※2としてレポートを公開しています。このレポート内のDX推進企業※3に行ったアンケートが掲載されていますので紹介します。
『DX推進を検討する事業関係者・デジタル技術担当者が一体となった推進組織があるか?』との質問に対して「ある」と回答したDX推進企業が87%と高い数値となっています。このことからも全社的なDX推進プロジェクトを持つ必要性がわかります。
同じくDX推進企業に行ったアンケートにおいて『DXの推進に関して経営会議で頻繁に報告・議論されるか?』との質問に対して「ある」と回答した企業が100%という回答でした。DX推進のためにはプロジェクトのみならず、経営層自らが積極的にDXに関わっていくことが必須であるといえます。
2019.11.12 10:09
コラム DX時代 〜第5回 産業の創造的破壊とゲームチェンジ (その2)
みなさま、こんにちは。
このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にはじめて関わる方、これからDXに取り組まれる方を対象に、DXとは何か?また企業がDXに取り組む際のポイントについてお伝えします。
■前回までのおさらい
前回(第4回目)まで、なぜいまDXが注目されているのか?2つ挙げた理由のうち2点目「産業の創造的破壊とゲームチェンジ」を取り上げました。
創造的破壊、ゲームチェンジが素早く頻繁に繰り返される経営環境のなかで、企業では新たなビジネスモデルの構築や、ビジネスプロセス変革、競争力の維持・向上が求められており、これらを実現する手段としてDX(デジタル革新)が注目されていることを解説しました。
今回は、企業が創造的破壊、ゲームチェンジに対応していくためにどのような取り組みを行っているのか?企業の様々な取り組みのうち「戦略・目標」、「組織・体制」に関わる取り組みについて、DX推進企業の事例を交えてお伝えします。
図:企業におけるDX推進
■戦略・目標 ~DXの目標を明確にする~
「ライバル企業がAIを使ったチャット型カスタマーサービスを構築して業務効率化につなげているそうだよ、うちも出遅れないようAIを使ったサービスを考えていこう」
「先日うちの社長が新聞を読んでいて、ある飲料会社がSNS上のビッグデータを活用したソーシャル調査をマーケティングに活用している特集記事を見つけたそうで、うちの部でもそのようなサービスを早速検討してほしいそうだ」
企業のマーケティング部門やシステム部門でよく耳にしそうな会話です。
先端技術に興味をもって成功事例に倣って自社サービスへの活用を検討する。すばらしい取り組みだと思います。しかしその一方で、上記のようなきっかけでスタートした取り組みの成功が少ないことも事実です。DBTセンター※1によると企業が取りくんでいるDXの約95%が失敗に終わっているそうです。その大きな理由の一つとして「デジタル化のためのデジタル化」があげられています。
前半で述べたようなAIをつかったサービスを考えよう、ビッグデータを使ったサービスを検討しよう、といったようにデジタル化そのものが目標となっていることが「デジタル化のためのデジタル化」です。
第2回目のコラムでも述べましたが、DXは経営者自らが先頭に立って企業全体で戦略、組織・体制、制度・プロセスの刷新から取り組む必要があります。「デジタル化のためのデジタル化」とならないようDXの背景や目標を明確にすることが重要です。
ある大手商社ではDXの取組みとして、クラウドサービス(Teams)導入による全社的な業務効率化を実現しました。この取組みにあたっては、はじめに「従業員の攻めの時間の創出」という全社的な目標を掲げ、定量的な数値目標も定めました。つまり、クラウドサービス導入による業務効率化は目標ではなく、あくまで「従業員の攻めの時間の創出」のための手段ということです。
■組織・体制 ~DX推進プロジェクト構築/経営層の積極的な関わり~
社内の優秀な人間を集めてデジタル変革チームを作る、ただそれだけでDXは推進されません。DBTセンターの調査結果では、組織内で収益力をもつ事業部門がプロジェクトに入って自らDXを推進していくことが重要であると述べています。プロジェクト内に事業の視点を与え、かつ事業部門がデジタルの視点を持つきっかけとなり、何よりDXの恩恵を受ける事業部門自らが計画し推進していくことは全社的にも大きな価値があります。
かつてのシステム化投資においては、システム開発するシステム部門、システム活用する事業部門で役割が分かれていましたが、DXにおいてこのような体制で推進することはまずありません。
経済産業省では積極的なIT利活用による経営革新、生産性向上に成功した企業を選定して「攻めのIT経営銘柄2019」※2としてレポートを公開しています。このレポート内のDX推進企業※3に行ったアンケートが掲載されていますので紹介します。
『DX推進を検討する事業関係者・デジタル技術担当者が一体となった推進組織があるか?』との質問に対して「ある」と回答したDX推進企業が87%と高い数値となっています。このことからも全社的なDX推進プロジェクトを持つ必要性がわかります。
同じくDX推進企業に行ったアンケートにおいて『DXの推進に関して経営会議で頻繁に報告・議論されるか?』との質問に対して「ある」と回答した企業が100%という回答でした。DX推進のためにはプロジェクトのみならず、経営層自らが積極的にDXに関わっていくことが必須であるといえます。
引用:攻めのIT経営銘柄2019 「攻めのIT経営アンケート調査2019」分析結果より
DX推進企業の事例をご紹介します。ある電力会社では社長をトップとした「DX戦略委員会」を立ち上げるとともに、DXの主役である各事業部門にDX推進体制を構築しました。さらに事業部門の取組みを高度にサポートするために、外部コンサルティング会社と共同でデジタル専門会社を設立して全社的なDXを強化しています。中小企業において専門会社を設立するほど大規模な取り組みは少ないですが、事業部門自ら外部ITコンサルタントをアドバイザーとして招集しDXを推進する事例も数多くあります。
■まとめ
デジタル改革の現場に携わっていますと、全社的にDXを進めている企業は少なく、未だシステム部門任せ、外部ベンダー頼みの企業が多いのが実感としてあります。しかし創造的破壊、ゲームチェンジが繰り返される事業環境においては、経営戦略やビジョンを描きつつ、業務や組織、企業文化・風土も含めたDX推進が大変重要です。
次回もDX推進企業の取組について、企業内の「制度・プロセス」面の対応事例をご紹介いたします。
以上
注釈
※1:「Global Center for Digital Business Transformation(DBTセンター)」
米シスコシステムズと世界トップクラスのビジネススクールであるスイスのIMDのパートナーシップにより設立されたDXの研究拠点
※2: 経済産業省 攻めのIT銘柄2019 https://www.meti.go.jp/press/2019/04/20190423004/20190423004-3.pdf
※3: 東京証券取引所(一部、二部、ジャスダック、マザーズ)上場会社約3,600社を対象うち448社を攻めのIT銘柄として選定
引用:
攻めのIT銘柄2019
日経xTECH 記事
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