このコラムでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)に初めて関わる、またこれからDXに取り組む企業経営者やマネージャーの方々を対象に、DXとは何か?また企業がDXに取り組む際のポイントについてお伝えしています。
■新型ウイルス問題に直面する企業
新型コロナウイルスが世界中に感染拡大し、国内でも学校の一斉休校や外出の自粛要請など、我々の生活にもこれまで経験したことのない影響を及ぼしています。一日でも早い感染の終息を祈るばかりです。企業にとっても経済的影響の深刻さが日に日に増しており、感染拡大防止のために在宅ワークや時差出勤、交代勤務、有給の推奨、休業といった様々な対応を迫られています。
今回のブログは、この状況で注目されるテレワーク※1について取り上げたいと思います。
※1:テレワークとは在宅ワークのほか、サテライトオフィスワークや、カフェなどでのモバイルワークといった場所にとらわれない働き方のこと
■企業のテレワーク導入状況
下のグラフは、東京都が都内の企業1万社(従業員数30人以上)に対して、テレワークの導入状況をアンケート調査した結果です。テレワーク導入済みの企業は全体の25.1%、一方でテレワークを導入する予定のない企業が53.7%と大きく上回っており、まだまだテレワーク導入が進んでいる企業は少ないと言えます。従業員数が30人未満の企業を含めるとテレワーク導入率はさらに低下することでしょう。
図:企業のテレワーク導入状況 (引用:東京都 多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)より)
今回の新型コロナウイルスの影響をきっかけに、テレワーク導入を進める企業は、上記調査をした1年前と比べて大きく増加することが見込まれます。私の周りでもテレワーク開始に向けたIT導入や制度策定などに関する相談がこの数か月で増えてきました。
■なぜ企業でテレワークが実現できないのか?
企業においてテレワーク導入がなかなか進まない理由は何でしょうか?製造業などそもそもテレワークが困難な業種や、社外に情報の持ち出しが難しいといった理由でテレワークが実現できない企業が存在します。しかし一方で、未だ紙に依存した業務が中心であるとか、社内システムの構成がオフィス内での利用前提となっているなどの理由で、オフィスの自席でなければ業務が成り立たない企業も多い印象です。このような企業は、業務のペーパーレス化やクラウドサービスの積極的活用といった対策により、テレワークを導入できる業務範囲が広がっていくことでしょう。
■テレワークの有効性
ところで企業にとってテレワークにはどのようなメリットがあるのでしょうか?テレワークの種類ごとに考えてみましょう。テレワークには大きく分けて以下の2つがあります。
• BCP※2型のテレワーク・・・災害時や緊急時に実施されるテレワーク
• WLB※3型のテレワーク・・・平時のテレワーク(職種を限定する、希望者をしぼるなどで実施されるケースが多い)
※2: BCP(事業継続計画)とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画※3: WLB(ワーク・ライフ・バランス)とは、「仕事と生活の調和」と訳され、やりがいや充実感を持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても多様な生き方が選択・実現できること
かつては、2つの型のテレワークは別々に検討されるテーマでしたが、3.11震災あたりから考え方が変わってきています。
ある大手通信会社の事例ですが、3.11以前は小規模な WLB 型テレワークを実施しておりセキュリティー観点から社員にパソコンを貸与していました。ところが2011年の震災発生、計画停電や節電に直面したときに、1000 人規模でテレワークを拡大する必要が出てきました。当時は、急激なテレワークの拡大に対応することができず、社員の家庭用パソコンの業務利用を許可する形で急遽対応を行いました。システムはなんとかなったものの、社員同士のコミュニケーションや人事評価など制度面の課題に直面しました。
その後、当時の課題を踏まえてコミュニケーション面の対策や人事制度の改訂を行い、BCP 型・WLB型を兼ねたテレワークに規模を拡大していきました。これまではBCP専用の機材やシステムを保有していましたが、クラウドサービスに刷新し、平時と災害時で同じインフラ、コミュニケーション基盤を活用することで、従業員の生産性向上やコスト削減につながる効果がありました。
現在、新型コロナウイルスの問題に直面し、緊急で在宅ワークなどの対応を迫られている企業も多いことかと思います。緊急時や災害時(BCP型)だけでなく、将来的には平時(WLB型)でも活用することを意識しながら、テレワーク導入の検討を進めていただければ幸いです。
弊社では企業の在宅ワーク推進を含めDX推進を検討されている企業様のご相談も受け付けております。こちらのフォームよりお問い合わせください。
■(参考)テレワーク推進に関する制度、サービス
中堅企業、中小企業向けではありますが、テレワークシステムやサービス導入時に活用できる補助金、助成金制度がありますのでご紹介します。(申請できる対象企業には条件がありますのでリンク先のサイトでご確認ください。)また、民間企業でもテレワークを導入したい企業向けの無償利用や導入支援プログラムがでてきています。これらの情報もぜひ参考にしてください。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けながらも設備投資や販路開拓、テレワーク推進など生産性向上に取り組む事業者に対して採択審査の加点措置を受けられます。
こちらは東京都の制度となりますが、新型コロナウイルス感染症等の拡大防止対策として、都内中堅・中小企業に対し、テレワーク導入に必要な機器やソフトウエア等の経費を助成する制度です。
テレワーク向けシステム、サービスを展開する企業でも、今回のコロナウイルス対策としてサービスの無償利用や導入支援といったプログラムが様々でてきています。今注目されているWeb会議サービスのZoomは掲載されていませんが、マイクロソフトのTeamsなどコミュニケーションサービス、Web会議サービスなど多数紹介されていますので参考にしてください。
次回も引き続き先端技術を活用したDX事例の解説を行います。
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